光は波なのに一粒ずつ届く?干渉と光電効果で分かる光の性質

数理物理

光を弱めると、検出器には一回ずつ点のような信号が届きます。ところが、その記録をたくさん重ねると、波の重なりから生じる縞模様が現れます。光はどのように理解すればよいのでしょうか。

光の性質を考えるには、空間にどう広がるかと、物質へどうエネルギーを渡すかを分けると見通しがよくなります。干渉は前者を、光電効果は後者を調べる代表例です。

ここでは波長と色の関係から始め、二重スリットの縞を計算します。その後、光子一個のエネルギーを求め、明るさを変えることと、色を変えることの違いを確かめましょう。

光の性質を知る入口は、波長と振動数

真空中を伝わる電磁場の波

光は電磁波の一種です。古典的には、電場と磁場の変化が空間を伝わる波として記述します。水面の波と違い、水や空気のような物質の媒質を必要としません。太陽の光が宇宙空間を通れるのも、このためです。

波の山から次の山までの距離が波長、一秒あたりの振動の回数が振動数です。真空中では、次の関係が成り立ちます。

\[c=\lambda\nu\]
記号/Symbol意味/Meaning単位・条件/Unit, condition
\(c\)真空中の光速/Light speed in vacuum約3.00×10⁸ m/s
\(\lambda,\nu\)波長、振動数/Wavelength, frequencym、Hz=s⁻¹

光速が一定なので、波長が短いほど振動数は高くなります。可視光はおよそ400〜700 nmの範囲にあり、短い側に青や紫、長い側に赤があります。ただし、目に映る色には複数の波長の混ざり方と、人の目の応答も関わります。

紫外線、X線、赤外線、電波も電磁波の仲間です。「見えるかどうか」は、人の目が感知する範囲による区別です。赤外線が見えなくても、検出器を使えば調べられます。また、物質との相互作用は波長や物質の状態によって異なります。

電場と磁場の式は、何を表しているか

電荷や電流のない真空では、マクスウェル方程式の一部を次のように書けます。変化する電場と磁場が、一緒に満たす関係です。

\[\begin{aligned}\nabla\times\boldsymbol E&=-\frac{\partial\boldsymbol B}{\partial t},\\\nabla\times\boldsymbol B&=\mu_0\varepsilon_0\frac{\partial\boldsymbol E}{\partial t}.\end{aligned}\]
記号/Symbol意味/Meaning単位・条件/Unit, condition
\(\boldsymbol E,\boldsymbol B\)電場と磁束密度/Electric and magnetic fieldsV/m、T
\(\varepsilon_0,\mu_0\)真空の誘電率と透磁率/Vacuum constantsF/m、H/m
\(\nabla\times,\partial/\partial t\)空間の回転と時間変化/Curl, time derivative電荷・電流のない真空

平面波では、電場と磁場は互いに直交し、進行方向にも垂直です。片方が消えた後でもう片方が生まれるという、交互の点滅ではありません。電場と磁場が同時に満たす関係として読む必要があります。

二つのスリットで、なぜ明暗の縞ができる?

振れ方を足してから、光の強さを求める

一つの波長に近い光で、二つの細い隙間を照らします。その先のスクリーンには、二つの隙間から来る光が重なります。山同士がそろえば強まり、山と谷が重なれば弱まります。これが干渉です。

別々に当てた光の明るさを、単に足しているのではありません。まず電場の振れ方を足し、その結果から光の強さを求めるため、明るい場所と暗い場所ができます。位相とは、この振動のどの段階にあるかを表す情報です。

二つの波源から広がる水面の波。光の干渉を考えるためのたとえ。AI生成イメージ
二つの波源から広がる水面の波。光の干渉を考えるためのたとえ。説明用のAI生成画像で、実際の実験・観測を記録した写真ではありません。

水面の波も、重なると高くなったり低くなったりします。ただし、水の動きと電磁場の波は別の現象です。たとえは重なり方の理解に使い、光にも水のような媒質が必要だとは考えないようにしましょう。

明るい縞が現れる条件

スリットから観測点までの道のりの差が、波長の整数倍になると位相がそろいます。同じ位相で照らされた細い二つのスリットを、遠方から観測する近似では、明線の条件は次の形です。

\[d\sin\theta=m\lambda\qquad(m=0,\pm1,\pm2,\ldots)\]
記号/Symbol意味/Meaning単位・条件/Unit, condition
\(d\)スリット中心間隔/Slit separationm
\(\theta\)正面からの観測角/Observation anglerad、遠方観測
\(m,\lambda\)縞の次数、波長/Fringe order, wavelength整数、m、ほぼ単色で位相関係が安定

位相関係が激しくばらつくと、縞は平均されて見えにくくなります。どんな光を二つの穴へ通しても、必ず鮮明な縞ができるわけではありません。また、スリット自体の幅も、全体の明るさの分布へ影響します。

縞の間隔を、ミリメートルで計算する

スクリーンを遠くすると、縞の間隔も広がる

スクリーンまでの距離をL、中央からの位置をyとします。角度が小さければ、sinθとtanθをともにy/Lで近似できます。隣り合う明線の間隔は、次の式になります。

\[\Delta y\approx\frac{\lambda L}{d}\]
記号/Symbol意味/Meaning単位・条件/Unit, condition
\(\Delta y,L\)明線間隔、スクリーンまでの距離/Fringe spacing, screen distancem、m、L≫dかつ小角

波長500 nm、スリット間隔0.20 mm、スクリーンまで2.0 mとします。最初に波長を5.00×10⁻⁷ m、間隔を2.0×10⁻⁴ mへ直して代入します。

\[\begin{aligned}\Delta y&\approx\frac{(5.00\times10^{-7})(2.0)}{2.0\times10^{-4}}\ \mathrm m\\&=5.0\times10^{-3}\ \mathrm m=5.0\ \mathrm{mm}.\end{aligned}\]

波長と装置の条件で、分布を読み分ける

式から、同じ装置なら波長が長いほど縞の間隔が広がると分かります。したがって、赤と青の光では明線の位置が異なります。一方、実際のスリットには幅があり、一つの隙間から広がる回折の効果も重なります。

二重スリットの光学装置。二本の縦のスリットに対応して、明暗の縞も縦に並ぶ概念。AI生成イメージ
二重スリットの光学装置。二本の縦のスリットに対応して、明暗の縞も縦に並ぶ概念。説明用のAI生成画像で、実際の実験・観測を記録した写真ではありません。

明線の位置の式だけで、写真の各部分の強さまで決まるわけではありません。スリットの幅、光源の大きさ、検出器の分解能なども必要です。理想化した計算と、装置が記録する画像を区別して使いましょう。

光電効果では、光子一個のエネルギーが重要になる

明るくすることと、色を変えることは違う

金属へ光を当てると、表面から電子が飛び出す場合があります。これが外部光電効果です。通常の一光子による放出では、電子を出すのに必要なエネルギーを、光子一個が持つかどうかが重要になります。

\[E_\gamma=h\nu=\frac{hc}{\lambda}\]
記号/Symbol意味/Meaning単位・条件/Unit, condition
\(E_\gamma\)光子一個のエネルギー/Photon energyJ
\(h\)プランク定数/Planck constant6.62607015×10⁻³⁴ J s
\(\nu,\lambda\)振動数、真空中の波長/Frequency, wavelengthHz、m

同じ波長の光を明るくすると、主に単位時間に届く光子の数が増えます。一個あたりのエネルギーが増える操作ではありません。また、この式は、光子が小さな硬い球として電子を弾くという模型を要求するものでもありません。

飛び出す電子の、最大エネルギーを求める

電子を金属の外へ取り出すための最低エネルギーを仕事関数φと呼びます。受け取った光子のエネルギーのうち、この仕事関数を超えた分が、電子の最大運動エネルギーになります。

\[K_{\max}=h\nu-\phi\]
記号/Symbol意味/Meaning単位・条件/Unit, condition
\(K_{\max},\phi\)最大運動エネルギー、仕事関数/Maximum kinetic energy, work functionJまたはeV。同じ単位で計算
\(h\nu\ge\phi\)一光子による放出条件/Threshold多光子過程などは別に扱う

光子が2.48 eV、仕事関数を2.00 eVと仮定すると、最大運動エネルギーは0.48 eVです。仕事関数は物質や表面の状態によって変わります。電子が内部でエネルギーを失う場合もあるため、全部の電子がこの最大値を持つわけではありません。

光と電子のやり取りを調べる光電管装置の概念。AI生成イメージ
光と電子のやり取りを調べる光電管装置の概念。説明用のAI生成画像で、実際の実験・観測を記録した写真ではありません。

500 nmの光子は、約2.48 eV

ジュールを計算してから、電子ボルトへ換算する

波長500 nmを5.00×10⁻⁷ mに直し、光子エネルギーの式へ代入します。nmとmを混ぜると10億倍の違いになるので、最初の単位換算が重要です。

\[\begin{aligned}E_\gamma&=\frac{(6.626\times10^{-34})(2.998\times10^8)}{5.00\times10^{-7}}\ \mathrm J\\&\approx3.97\times10^{-19}\ \mathrm J.\end{aligned}\]

1 eVは約1.602×10⁻¹⁹ Jです。したがって、3.97×10⁻¹⁹を1.602×10⁻¹⁹で割ると、約2.48 eVになります。波長を半分にすれば一光子のエネルギーは2倍ですが、同じ波長の明るさを2倍にしても一光子のエネルギーは変わりません。

半導体のセンサーは、光電管と構造を分けて考える

カメラのセンサーや太陽電池でも、光が物質へ渡すエネルギーが重要です。ただし、金属から電子を外へ放出する光電管と、半導体の内部で電子や正孔を作り取り出す装置は、同じ構造ではありません。電子がどこへ移り、何を電気信号として読むかを区別します。

一粒ずつ届くのに、干渉するのはなぜ?

一回の検出と、多数の記録の分布を同時に考える

光を十分弱め、検出が一回ずつ起きるようにしても、干渉を観測できる条件を保てば、多数の記録から縞が現れます。一回の検出は局所的ですが、その位置の分布には二つの経路の重ね合わせが関わります。

したがって、「途中は普通の波で、直前に普通の小球へ変身する」と考えると行き詰まります。量子論では、装置の条件に応じた検出確率や相関を求め、繰り返し測った結果の分布と比べます。

どちらのスリットを通ったかを区別できる情報が装置や周囲に残るなら、干渉の見え方も変わります。人間が見たかどうかだけが条件ではありません。経路情報を残す相互作用まで考える必要があります。

波と粒子は、どちらも日常から借りた言葉

波と粒子の二重性という言葉は、干渉と局所的な検出を結ぶ入口です。しかし、その二つの日常的なたとえだけで、光の全性質を表すわけではありません。実験で何を準備し、何を測るかを明確にすることが大切です。

また、光子の相関を使う量子通信も、好きな情報を真空中の光速より速く送る手段ではありません。不思議な相関があることと、自由な信号を無制限に速く送れることは別です。

まとめ

光の性質は、干渉する波の分布と、一回ずつ起きるエネルギーのやり取りの両方に現れます。波長は縞の間隔だけでなく、光子一個のエネルギーにも結び付きます。同じ色を明るくすることと、色を変えることを区別すると、二つの実験が一つの流れで理解できます。

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サムネイルと本文画像はすべて新しく用意したAI生成イメージです。数式と数値例は原理を説明するためのもので、画像から得た測定値ではありません。

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