構造色とは?シャボン玉・CD・クジャクの色を光の波で理解する

数理物理

CDの銀色の面を少し傾けると、赤や青の帯が動きます。シャボン玉の表面でも、形を変えながら色が流れていきます。絵の具を混ぜた覚えはないのに、どこからこんな色が現れるのでしょうか。

光が当たったとき、表面の細かな構造によって特定の波長が強く戻ってくることがあります。こうした発色が構造色です。シャボン玉では膜の厚さが、CDでは記録トラックの間隔が、光の波の重なり方を変えています。同じ虹色に見えても、光の通る道筋をたどると、働いている構造の違いが見えてきます。

光の波を重ねると、明るい色が選ばれる

赤い絵の具が赤く見えるのは、顔料が光の一部を吸収し、残った光が目に届くためです。一方、シャボン玉やCDの色を考えるときには、光の吸収に加えて、波の重なりに目を向ける必要があります。

光は電場と磁場の振動が伝わる波です。同じ波長の光が二つ重なったとき、振動の山と山がそろえば振幅が大きくなり、山と谷が重なれば小さくなります。これが干渉です。波の周期の中で、振動がどの位置にあるかを位相と呼びます。

白い光に含まれる波長は一つではありません。およそ400〜700nmの可視光のうち、どの波長がよく戻ってくるかが変われば、見える色も変わります。材料の構造が、光の進む距離や反射する位置に差をつけることで、その選び分けが起きます。

構造色を考える基礎となる波の干渉。同じ振幅で位相がπずれた二つの波とその和
同じ振幅の波でも、山と谷が重なると和は小さくなる。光の電場を表した模式図。図:Xypha

図では、振動が半周期ずれた二つの波を描いています。青い線の山に、破線の谷が重なっています。この場合、二つの振幅が等しければ、和はゼロになります。実際の表面でどの程度暗くなるかは、光の強さや反射の回数にもよりますが、色を選ぶ仕組みの入口はこの波の足し算です。

シャボン玉の表と裏で、光が二つに分かれる

薄い膜が、二本の光の道を作る

シャボン玉の膜を、空気に挟まれた薄い水の層として考えてみます。光が膜へ来ると、一部は表面で反射し、残りは中へ入ります。膜の中へ入った光の一部は、裏面で反射して、表面側へ戻ってきます。

目には、表面で戻った光と、膜の中を往復してから戻った光が、一緒に届きます。二つは同じ照明から来た光ですが、通った経路が違います。そこで生じた位相の差が、波長ごとの強め合いと弱め合いを生みます。これが薄膜干渉です。

膜の厚さが一様なら、同じ方向から見る範囲では似た色が現れます。ところが、シャボン玉の膜は流れたり、薄くなったりしながら厚さを変えていきます。そのため、強く戻る波長も場所や時間によって変わり、表面に色の帯が動いて見えます。

構造色を作る石けん膜の二つの反射。表面と裏面で反射した光が重なる
空気に挟まれた膜へ、垂直に光を当てた場合。光路を見分けるため、矢印を横へずらして描いている。図:Xypha

進んだ距離だけでなく、反射にも位相の差がある

薄膜の式を使うとき、忘れやすいことがあります。光の位相は、進んだ距離によって変わるだけでなく、反射した境界でも変わるのです。

吸収のない通常の透明な材料へ、ほぼ垂直に光が入る場合を考えます。空気から水へ向かう境界で反射すると、電場の振動は反転し、位相が半周期ずれます。水から空気へ向かう境界での反射では、この反転がありません。石けん膜の表面と裏面から来た二つの光には、反射だけで半周期のずれがついています。

そこで、膜内を進んだことで、さらに半周期ぶんの差がつくと、二つの波は再びそろいます。膜がある厚さになったときに特定の色が明るくなるのは、この二つの差が合わさった結果です。

膜の厚さ100nmから、532nmの光を計算する

膜を真っすぐに見ているとし、光も垂直に入れることにします。膜の屈折率をn、厚さをd、真空中の波長をλとすると、空気に挟まれた膜の反射光が強め合う条件は次の式になります。

\[2nd=\left(m+\frac12\right)\lambda\]
記号/Symbol意味/Meaning単位・条件/Unit
n膜の屈折率/Refractive index無次元
d膜の厚さ/Film thicknessmまたはnm。波長と単位をそろえる
λ真空中の波長/Vacuum wavelengthmまたはnm
m干渉の次数/Interference order0、1、2、…

左辺の2ndは、膜の中を往復する光の光学的な距離です。幾何学的な長さ2dに屈折率nを掛け、光の波がどれだけ位相を進めるかを表しています。右辺に半波長ぶんの項があるのは、表と裏の反射で位相反転の有無が違うためです。

緑に当たる波長が、強く戻ってくる条件

n=1.33、d=100nmとし、最も低い次数m=0を選ぶと、2nd=λ/2なので、λ=4ndとなります。数字を入れてみましょう。

\[\begin{aligned}\lambda&=4nd\\&=4\times1.33\times100\,\mathrm{nm}\\&=532\,\mathrm{nm}\end{aligned}\]

532nmは、可視光の緑に当たる波長です。この計算は、その条件で反射が強くなる波長を求めたものです。シャボン玉が緑一色になるとまではいえません。照明に含まれる光や、ほかの波長での反射も一緒に目へ届くためです。

また、この式は膜を正面から見る場合のものです。膜内の屈折角をθとすると、斜めの光では光路差が2nd cos θとなり、強く反射する波長も変わります。厚さが同じでも、見る方向によって色が変わる理由が、ここにあります。

CDでは、規則的に並んだトラックが光を分ける

CDの表面には、細い記録トラックが並んでいます。一部分を拡大して考えると、ほぼ平行な細い構造が繰り返されているとみなせます。これが、光を波長ごとに別の方向へ送り出す回折格子のように働きます。

隣り合う構造から戻った光は、目へ向かう途中で重なります。ある方向では、二つの光が通る距離の差がちょうど一波長になります。その方向には、その波長の光が強く届きます。別の波長では、強め合う角度も変わるので、見る向きによって赤や青が現れます。

構造色と回折格子。垂直入射した光のうち450nm、550nm、650nmが強め合う方向の計算図
間隔1.6μmの格子へ垂直に光を当て、一次回折を計算した例。波長が長いほど、法線から離れた方向に光が出る。図:Xypha

550nmの光は、約20度の方向へ

間隔dの格子へ垂直に光を当てた場合、強め合う方向は次の式で求められます。角度θは格子面の法線から測ります。

\[d\sin\theta=m\lambda\]
記号/Symbol意味/Meaning単位・条件/Unit
d格子の間隔/Grating period波長と同じ長さの単位
θ回折角/Diffraction angle法線から測る。入射は垂直
m回折の次数/Diffraction order0、±1、±2、…
λ光の波長/Wavelength格子の外側は空気と近似

例として、d=1.6μm=1600nm、λ=550nm、m=1とします。長さの単位をそろえて割ると、sin θ=550/1600=0.34375です。この角度は約20.1度になります。

同じ間隔で450nmの青い光なら約16.3度、650nmの赤い光なら約24.0度です。同じ白い照明から来た光でも、構造によって届く方向が分かれることが、数字からも分かります。CDを傾けると、この光と目の位置関係が変わり、見える色も動きます。

クジャクの羽では、微細な配列が色を作る

生物の構造色でも、光が戻ってくる場所の間隔が重要です。クジャクの羽を細かく見ると、小羽枝と呼ばれる細い部分があります。その内部の規則的な構造が、青や緑などの色に関わっています。

Ziらが2003年に報告した研究では、小羽枝内の二次元的な周期構造を調べ、配列の間隔や繰り返しの数と、見える色との関係を計算しています。光がある方向へ進みにくく、強く反射される波長帯があることも示されました。

こうした、屈折率が周期的に変わる構造はフォトニック結晶と呼ばれます。電子の振る舞いを原子の並びが変えるように、微細構造の並びが光の伝わり方を変える、という見方です。シャボン玉の一枚の膜より構造は複雑ですが、決まった間隔から来る光の波を重ねて考える点は共通しています。

ただし、規則正しく並ぶことだけが構造色の条件ではありません。粒子が完全な結晶のようには並んでいない材料でも、近い距離の並び方に特徴があれば、色を作ることがあります。ハーバード大学のManoharan研究室は、角度によって色が変わりにくい構造色も研究しています。構造色がすべて金属のようにきらめくわけではないのです。

「染める色」とは違う、材料づくりの面白さ

構造色を利用すると、色素の種類を変える代わりに、膜の厚さや粒子の間隔を変えて色を調整できます。例えば、材料が水を含んでふくらめば、微細な間隔や屈折率が変わり、反射する色が動く可能性があります。色を表面の飾りとしてだけでなく、材料の状態を読む手掛かりとして考えられます。

もっとも、鮮やかな色ができれば、すぐに服や塗料へ使えるわけではありません。布を曲げたり、表面をこすったりすれば、構造や光の当たり方が変わります。照明の違いでも色は変わるので、用途に合わせて、どんな条件で同じ色を保ちたいのかを決める必要があります。

構造色は、色素の化学的な変化による退色を抑えられるように設計できます。その一方で、微細構造がつぶれたり、表面が汚れたりすれば、見える色は変わります。美しい色を長く使うためには、光の計算と同じくらい、構造を保つ材料の性質が効いてきます。

まとめ

シャボン玉の色を動かすのは、膜の表と裏で反射した光の重なりです。CDでは規則的なトラックが、クジャクの羽では小羽枝内の配列が、強く戻ってくる光を選び分けています。

色を見たときに、光がどこで反射し、どれだけ離れた場所から戻ってきたかを想像してみる。そうすると、身近な虹色の中に、目では見えないほど小さな構造を読み取る手掛かりが見つかります。

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本文の図はXyphaが作成した計算図・模式図です。数値例は、記載した条件での原理説明のための計算です。サムネイルはシャボン玉、CD、羽を組み合わせたAI生成イメージで、実験写真ではありません。

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