画像認識AIはどう物体を見分ける?CNNの仕組みを計算で解説

画像認識AI テクノロジー

画像認識AIの仕組みは、画像を数値の配列として受け取り、学習で調整した計算を通して物体の種類や位置を推定します。「猫の耳があるから猫」と人間が一つずつ規則を書く方法とは異なり、ニューラルネットワークでは多数の重みをデータから調整します。ただし、判断に使った特徴が人間の考える「耳」や「顔」と一致するとは限りません。

ここでは教師あり学習のCNN(畳み込みニューラルネットワーク)による画像分類を例に、画像認識AIの仕組みを数値の変化から追います。数値例は仕組みを説明するために本記事で作成したもので、学習済みモデルの実測値ではありません。

この記事では、①画素を数値にする、②畳み込みで特徴を取り出す、③損失から重みを更新する、④未学習の画像で評価する、という順番で確認します。掛け算と足し算から読み進められ、微分の式は「重みをどちらへ動かすか」という意味も添えて説明します。

画像認識AIの仕組みを知る前に:分類・検出・領域分割の違い

課題入力が猫と犬の写真なら出力の例
画像分類画像全体の種類を判定する「猫」などのクラス。複数ラベルを付ける設計もある
物体検出猫と犬をそれぞれ見つけるクラスと、それぞれを囲む矩形の座標
セグメンテーション画素ごとに領域を分ける猫・犬・背景などの画素ラベル

一つの画像に猫と犬がいる場合、一つのクラスしか出せない分類器では「両方の位置を知りたい」という目的を満たせません。モデル選びの前に必要な出力を決めることが大切です。

画像認識AIの仕組みを示す、猫の画像が複数の処理層を通る概念イラスト
猫の画像から特徴を計算していく概念イラスト。実際の特徴マップやモデルの測定結果を示すものではありません。

画像はどう数値になる?

縦100×横100画素のRGB画像なら、赤・緑・青の3成分があるため、100×100×3=30,000個の値で表せます。一般的な8ビット画像では各成分が0〜255で、学習時には255で割るなど、モデルに合わせた前処理を行います。配列の並びは実装によって異なり、PyTorchのConv2dでは通常、バッチ数・チャンネル数・高さ・幅の順です。PyTorch公式:Conv2d。

例えば1画素のRGB値が(255, 128, 0)なら、255で割った値は次の通りです。これは色の数値表現を変えた段階で、まだ猫だと判断したわけではありません。

\[ (R,G,B)=\left(\frac{255}{255},\frac{128}{255},\frac{0}{255}\right)\approx(1.000,0.502,0.000). \]

記号意味単位・条件
R、G、B赤・緑・青の成分入力は0〜255、変換後は0〜1
2558ビット成分の最大値無次元
変換後の値画素成分を255で割った値無次元。モデル指定の前処理を優先

学習済みモデルでは、画像サイズや平均・標準偏差による正規化も、そのモデルが指定する手順に合わせます。別の前処理を混ぜると、学習時と入力の分布が変わります。

数値を並べただけでは、猫と背景の区別はまだありません。CNNは近くの画素をまとめて計算し、その結果を次の層へ渡します。

CNNの畳み込み:3×3のフィルターを手計算する

説明を簡単にするため、グレースケール画像の小さな領域を考えます。次の表の各行を上から重ねると、3×3の画像片XとフィルターKになります。右側だけ明るい画像片です。

行画像片Xの3画素フィルターKの3係数
上0, 0, 1−1, 0, 1
中0, 0, 1−1, 0, 1
下0, 0, 1−1, 0, 1

同じ位置の数を掛けて全部足します。1行の結果が1なので、3行の合計は3です。

\[ y=\sum_{i=1}^{3}\sum_{j=1}^{3}X_{ij}K_{ij}+b=3\times\{0(-1)+0(0)+1(1)\}+0=3. \]

記号意味単位・条件
Xᵢⱼ画像片のi行j列の値無次元、ここでは0または1
Kᵢⱼフィルターの同じ位置の係数無次元、ここでは−1・0・1
bバイアス0と仮定
yこの位置での出力無次元、計算結果は3

画像片が全部1なら各行は−1+0+1=0となり、出力も0です。このフィルターは一様な明るさより左右の差に反応します。

フィルターを画像上でずらしながらこの計算をすると、場所ごとの反応を並べた「特徴マップ」ができます。CNNで畳み込みと呼ばれる処理は、PyTorchではフィルターを反転しない相互相関として実装されています。上の計算もその定義です。

次に各行を[0, 0, 1, 1]へ広げ、同じフィルターを1画素ずつ動かします。左と右の窓はどちらも3となり、特徴マップは[3, 3]です。パディング0、ストライド1では出力の高さと幅を次の式で確認できます。

\[ H_{out}=H_{in}-H_k+1=3-3+1=1,\qquad W_{out}=W_{in}-W_k+1=4-3+1=2. \]

記号意味単位・条件
Hᵢₙ、Wᵢₙ入力の高さ・幅画素数、3・4
Hₖ、Wₖフィルターの高さ・幅画素数、3・3
Hₒᵤₜ、Wₒᵤₜ出力の高さ・幅画素位置数、1・2
条件パディング0、ストライド1この例に限る

実際には複数のチャンネル・フィルターを使い、係数を学習します。この手作りフィルターが、学習後に必ず現れるわけではありません。層を重ねると広い範囲の情報を組み合わせられますが、各層が必ず「線→耳→猫」という人間に分かる役割分担になるわけでもありません。

ReLU(レルー)はmax(0, x)、つまり負の値を0にし、正の値をそのまま通す変換です。例えば[−3, 0, 3]は[0, 0, 3]になります。こうした非線形変換を間に入れることで、線形計算だけでは表せない関係を扱えます。プーリングで空間サイズを小さくする構成もありますが、物体の移動や回転に常に不変になる保証はありません。

「学習する」とは、どの数字を変えること?

分類器が猫・犬のスコアを出し、softmaxで猫0.8、犬0.2へ変換したとします。正解が猫なら、重み付けやラベル平滑化を使わない交差エントロピー損失は次の値です。猫の確率が0.2なら損失は約1.609へ増えます。PyTorch公式:CrossEntropyLoss。

\[ L=-\ln p_{cat}=-\ln(0.8)\approx0.223. \]

softmaxの途中も確認します。猫・犬のスコアをln(4)≈1.386と0にすると、指数を取った値は4と1です。

\[ p_{cat}=\frac{e^{\ln4}}{e^{\ln4}+e^0}=\frac45=0.8,\qquad p_{dog}=\frac15=0.2. \]

記号意味単位・条件
p_cat、p_dog猫・犬へ割り当てた確率無次元、合計1
ln4、0softmaxへ入れるスコアlogits、無次元
L正解クラスの交差エントロピー損失無次元、小さいほど正解へ高確率
条件2クラスの説明例PyTorchには通常logitsを渡す

この損失が小さくなる方向を調べるのが勾配計算です。勾配が正なら、その重みを少し増やすと損失が増える方向を表します。例えば、ある重みw=0.50で、損失の微分∂L/∂w=0.30、学習率η=0.10だったなら、単純な勾配降下法の1回の更新は次のようになります。

\[ w_{new}=w-\eta\frac{\partial L}{\partial w}=0.50-0.10\times0.30=0.47. \]

記号意味単位・条件
w、w_new更新前・更新後の重み無次元の説明例、0.50・0.47
η学習率無次元、0.10
∂L/∂w重みに対する損失の勾配この例では0.30
L損失前の0.223とは別例

学習率が大きすぎると損失が増えることもあるため、更新のたびに改善する保証はありません。これは一つの重みに注目した別の数値例で、前の確率0.8から微分0.30を求めたわけではありません。誤差逆伝播は各重みの勾配を計算し、オプティマイザーがその勾配を使って重みを更新します。両者は区別できます。PyTorch公式:ニューラルネットワークの学習手順。

学習が済んだモデルで新しい画像を判定する「推論」では、通常は重みを固定して出力を計算します。また、猫0.8という値はモデルの出力であって、そのまま現実の正解率80%を保証するものではありません。

正解率だけでは、苦手な画像が見えない

猫40枚、犬60枚の未学習画像を評価したとします。次の表は説明用の仮想結果です。

実際の種類猫と予測犬と予測
猫40枚30枚10枚
犬60枚5枚55枚

猫を陽性とすると、真陽性TP=30、偽陽性FP=5、偽陰性FN=10、真陰性TN=55です。Googleの分類評価指標の定義へ代入します。

\[ \begin{aligned}\mathrm{Accuracy}&=\frac{TP+TN}{TP+TN+FP+FN}=\frac{30+55}{100}=85\%,\\ \mathrm{Precision}&=\frac{TP}{TP+FP}=\frac{30}{35}\approx85.7\%,\\ \mathrm{Recall}&=\frac{TP}{TP+FN}=\frac{30}{40}=75\%.\end{aligned} \]

記号意味単位・条件
TP、TN猫を猫、犬を犬と正しく予測枚数、30・55
FP犬を猫と誤って予測枚数、5
FN猫を犬と誤って予測枚数、10
Accuracy全体の正解率85%
Precision、Recall猫予測の適合率、猫の再現率約85.7%、75%

「猫を見逃さない」目的なら、全体の正解率だけでなくFN=10と再現率へ注目します。用途ごとに偽陰性と偽陽性の損失が違うためです。

さらに、室内の猫だけで学習していたら、屋外の猫を見逃すかもしれません。背景・撮影機器・明るさ・遮蔽の有無ごとに結果を分けると、失敗の原因を調べやすくなります。データを増やす場合も、似た写真の枚数だけを増やすより、不足している条件を補う方針が必要です。

自分で試すときのデータの分け方

重みを調整する訓練用、設定を選ぶ検証用、最後の性能を測るテスト用を分けます。同じ写真の切り抜きや同じ連写が訓練側とテスト側に入ると、新しい場面への強さを過大評価するおそれがあります。例えば撮影日や個体単位で分け、画像の水増しは分割後に訓練用へ適用します。

テスト結果を見て何度も設定を選ぶと、そのテストにも合わせ込んでしまいます。試行の比較は検証用で行い、最後のテストは評価のために残す、という役割分担にします。これは上の仮想結果を実際に測るときにも必要な条件です。

画像認識はCNNだけではない

画像を小さなパッチに分けてTransformerへ入力するVision Transformer(ViT)もあります。CNNは仕組みを学ぶ有用な出発点ですが、画像認識全体と同義ではありません。どの方式が適するかは、データ・計算量・求める出力によります。Dosovitskiyほか「An Image is Worth 16×16 Words」(原著論文)。

重み・活性化関数・層の関係をもう少し数式で知りたい方は、ニューラルネットワークの仕組みへ進めます。まずは上の3×3の画像片を左右反転し、出力が3から−3へ変わることを計算してみると、フィルターが何に反応したかを確かめられます。

使う場面によって、許せる誤りが変わる

写真整理なら誤ったタグを後で直せますが、工場の検品では不良品の見逃しと良品の誤廃棄で損失が異なります。モデル名や正解率だけで選ばず、減らしたい誤りと人が確認する位置を決めます。医療画像の出力も診断そのものと同一視せず、対象患者群や撮影条件での検証が必要です。

画像認識AIの仕組みを理解する出発点は、「画像を数値にする」「特徴を計算する」「損失から重みを変える」の3つです。モデルを使う段階では、計算の仕組みに加え、どの条件の画像で失敗するかを確かめると、改善すべきデータも見えてきます。

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