三角関数は、角度から辺の長さの比や円上の位置を求める関数です。測れない高さを計算したり、音やばねのように繰り返す変化を表したりするときに役立ちます。なぜ三角形の話が波の式につながるのでしょうか。この記事では直角三角形から単位円、公式、微積分へ順に進み、数値を代入して意味と適用条件を確かめます。
アイキャッチと本文のイメージ画像はAI生成です。実在の場所や実験を記録した写真ではありません。単位円とグラフは、定義と計算に基づく編集室の作図です。
1. 直角三角形から三角関数を定義する
鋭角θに向かい合う辺が対辺、直角の向かいが斜辺、残りが隣辺です。θに隣接する辺でも、斜辺は「隣辺」には含めません。同じ角度なら相似な三角形で辺の比は変わらないため、次の関数を定義できます。
| 記号 | 意味 | 単位・条件 |
|---|---|---|
| θ | 角度 | 度またはrad。微積分ではrad |
| sin・cos・tan | 正弦・余弦・正接 | 辺の比で無次元。tanはcos≠0 |
| 対辺・隣辺・斜辺 | θを基準とする辺の長さ | 同じ長さ単位。斜辺は最長、各辺は正 |
対辺3 cm、隣辺4 cmなら、斜辺は√(3²+4²)=5 cmです。sin θ=3 cm÷5 cm=0.6、cos θ=4 cm÷5 cm=0.8、tan θ=3 cm÷4 cm=0.75。単位は相殺され、比だけが残ります。

2. 単位円で任意の角度へ広げる
原点を中心とする半径1の円で、正のx軸から反時計回りに角度θを測ります。円上の点の横座標がcos θ、縦座標がsin θです。これで負の角や一周を超える角も扱えます。tanは横座標が0になる角では定義されません。
| 記号 | 意味 | 単位・条件 |
|---|---|---|
| θ | 角度 | 度またはrad。微積分ではrad |
| sin・cos・tan | 正弦・余弦・正接 | 辺の比で無次元。tanはcos≠0 |
| x・y | 単位円上の横・縦座標 | 無次元、x²+y²=1 |
半周180°はπ rad、90°はπ/2 radです。例えばθ=π/2では点は(0, 1)となり、cos θ=0、sin θ=1。三角形の鋭角だけの定義から、座標を使う定義へ広げたことが大切です。
ラジアンは、円弧の長さを半径で割って測る角度です。半径と同じ長さの円弧を見込む角が1 radになります。単位円では半径が1なので円弧の長さと角度の数値が一致し、一周は円周の長さから2π radです。図の60°なら、60×π/180=π/3 rad。電卓で度とradを取り違えると、同じ数字を入力しても違う答えになります。
3. 基本公式をどう使うか
3.1 二乗の和と正接の関係
単位円の座標にピタゴラスの定理を使うと、次の恒等式が得られます。sin² θは(sin θ)²の意味です。さらに両辺をcos² θで割ると、正接の関係式になります。
| 記号 | 意味 | 単位・条件 |
|---|---|---|
| θ | 角度 | 度またはrad。微積分ではrad |
| sin・cos・tan | 正弦・余弦・正接 | 辺の比で無次元。tanはcos≠0 |
二つ目の式はcos θ≠0の範囲で使います。先の3–4–5の例でも0.6²+0.8²=0.36+0.64=1であり、計算の確認に利用できます。
3.2 加法定理
角度を足したとき、関数値をそのまま足すことはできません。回転を二段階に分けると、次の加法定理が得られます。
| 記号 | 意味 | 単位・条件 |
|---|---|---|
| α・β | 足し合わせる二つの角 | 同じ角度単位を使う |
| sin・cos | 正弦・余弦 | 無次元 |
例えばsin 75°=sin(45°+30°)=(√2/2)(√3/2)+(√2/2)(1/2)=(√6+√2)/4≒0.966です。既知の角の値から別の角を求められます。
3.3 倍角公式と二乗を下げる公式
加法定理で二つの角を同じにすると倍角公式が得られます。その式を整理した二乗の公式は、積分で次数を下げるときにも便利です。
| 記号 | 意味 | 単位・条件 |
|---|---|---|
| θ | 角度 | 度またはrad。微積分ではrad |
| sin・cos・tan | 正弦・余弦・正接 | 辺の比で無次元。tanはcos≠0 |
二乗の式からsin θそのものを平方根で求める場合、符号は角の位置に依存します。常に正の平方根を取れるわけではありません。
4. グラフの周期と位相
4.1 正弦・余弦
| 記号 | 意味 | 単位・条件 |
|---|---|---|
| θ | 角度 | 度またはrad。微積分ではrad |
| sin・cos・tan | 正弦・余弦・正接 | 辺の比で無次元。tanはcos≠0 |
| y | 関数の値(この節) | 無次元、−1〜1 |
| π | 円周率 | 無次元 |
sinとcosは一周、すなわち2π radごとに同じ値を繰り返し、振幅は1です。cos θ=sin(θ+π/2)なので、cosはsinを横方向へπ/2だけ左にずらした波形です。次の比較で一周の変化を確認できます。
| θ(rad) | 0 | π/2 | π | 3π/2 | 2π |
|---|---|---|---|---|---|
| sin θ | 0 | 1 | 0 | −1 | 0 |
| cos θ | 1 | 0 | −1 | 0 | 1 |
4.2 正接
| 記号 | 意味 | 単位・条件 |
|---|---|---|
| θ | 角度 | 度またはrad。微積分ではrad |
| sin・cos・tan | 正弦・余弦・正接 | 辺の比で無次元。tanはcos≠0 |
| y | 正接の値 | 無次元、値の範囲に上下限なし |
| k | 周期を数える整数 | 単位なし、正・負・0 |
tanの周期はπ radです。θ=π/2+kπではcos θ=0となり、グラフには垂直漸近線が現れます。近づく側により値は正または負に大きくなりますが、その角で「無限大という値」を取るわけではありません。
5. 微分・積分にはラジアンを使う
5.1 微分
| 記号 | 意味 | 単位・条件 |
|---|---|---|
| θ | 角度 | 度またはrad。微積分ではrad |
| sin・cos・tan | 正弦・余弦・正接 | 辺の比で無次元。tanはcos≠0 |
| d/dθ | θに対する変化率 | θをradで測る |
| sec θ | 1/cos θ | cos θ≠0 |
| ω・t | 角周波数・時間 | rad/s・s。時間の式で使用 |
これらは角度をラジアンで表した公式です。度数法の角度をそのまま微分するとπ/180の係数が必要です。時間に依存するsin(ωt)では合成関数の微分によりω cos(ωt)となります。
5.2 積分
| 記号 | 意味 | 単位・条件 |
|---|---|---|
| θ | 角度 | 度またはrad。微積分ではrad |
| sin・cos・tan | 正弦・余弦・正接 | 辺の比で無次元。tanはcos≠0 |
| ∫・dθ | θについての不定積分 | ラジアンで扱う |
| C | 積分定数 | 各区間で定まる任意の定数 |
| ln・| | | 自然対数・絶対値 | tanの積分はcos θ≠0の区間 |
積分は微分を逆にたどる操作です。−cos θ+Cを微分するとsin θに戻ります。tanは定義されない角をまたがない区間で積分し、対数の中の絶対値を落とさないようにします。
6. オイラーの公式と波の表現
| 記号 | 意味 | 単位・条件 |
|---|---|---|
| e | 自然対数の底 | 無次元 |
| i | 虚数単位 | i²=−1 |
| θ | 位相を表す角 | rad |
| A | 振幅 | 表す量と同じ単位 |
オイラーの公式は円運動の横・縦成分を一つの複素指数関数にまとめます。二つ目の式は、正負の指数の差から正弦成分を取り出したものです。複素数による表現は計算の道具であり、測定量が複素数になるという意味ではありません。
7. 物理・工学の計算例
7.1 音波・光波の周期を読む
| 記号 | 意味 | 単位・条件 |
|---|---|---|
| y(t) | ある場所での時間変化 | 音圧ならPa、電場ならV/mなど |
| A | 振幅 | yと同じ単位、ここでは非負 |
| t | 時間 | s |
| ω | 角周波数 | rad/s、ω=2πf |
| φ | 初期位相 | rad |
| f・T | 周波数・周期 | Hz・s、T=1/f |
この式は単一周波数の成分を表します。実際の音や光が常に一つの正弦波とは限りません。周波数f=2 Hzならω=2π×2=4π rad/s、T=1/2=0.5 s。位相φ=0、時刻t=0.125 sではωt=π/2となり、y=Aで最大です。

7.2 ばねと質量の単振動
| 記号 | 意味 | 単位・条件 |
|---|---|---|
| m | 振動する質量 | kg、正 |
| k | ばね定数(この節) | N/m、正。第4節の整数kと別 |
| x・A | 平衡位置からの変位・振幅 | m |
| t・ω・φ | 時間・角周波数・初期位相 | s・rad/s・rad |
| d²x/dt² | 変位の時間に対する二階微分(加速度) | m/s² |
| T | 一往復の周期 | s、T=2π/ω |
ばねの力が−kxで、摩擦・外力がないモデルでは、ニュートンの運動方程式からこの式が導かれます。解を二回微分すると加速度は−ω²xとなり、代入でω²=k/mを確認できます。
m=0.50 kg、k=8.0 N/mなら、k/m=16 s⁻²、ω=√16=4.0 rad/sです。周期T=2π/ω=2π/4.0≒1.57 s。振幅が変わっても、この理想モデルでは周期は変わりません。

7.3 交流電圧と位相
| 記号 | 意味 | 単位・条件 |
|---|---|---|
| v(t)・V₀ | 瞬時電圧・最大電圧 | V |
| t・ω | 時間・角周波数 | s・rad/s |
| f | 電源の周波数 | Hz、ω=2πf |
例えばf=50 Hzならω=100π rad/s、一周期は0.020 sです。抵抗だけの回路では電流は電圧と同位相ですが、コイルやコンデンサーでは位相差が生じます。複素数で振幅と位相をまとめると、インピーダンスによる交流解析につながります。
8. フーリエ解析と成り立つ条件
区分的に滑らかな周期関数は、三角関数の級数で表せます。以下ではa₀を平均値とする規約を使います。教材によっては定数項をa₀/2と書くため、係数の定義をそろえて読む必要があります。
| 記号 | 意味 | 単位・条件 |
|---|---|---|
| f(t) | 周期Tの関数(この節) | 表す信号の単位。第7節の周波数fと別 |
| t・T | 時間・基本周期 | s |
| ω₀ | 基本角周波数 | rad/s、ω₀=2π/T |
| a₀ | 一周期の平均値 | f(t)と同じ単位 |
| aₙ・bₙ | 各周波数成分の係数 | f(t)と同じ単位 |
| n・Σ | 正の整数・成分の総和 | n=1,2,… |
n番目の項は基本周波数のn倍の成分です。連続な点では級数は関数値に収束し、跳びがある点では左右の極限値の平均に収束します。したがって上の等号は連続な点で読むのが適切で、「任意の周期関数で、どの点でも一致する」とは言えません。
有限個の項で計算すると近似になるため、急な変化の周辺では誤差にも注意します。音の周波数成分を調べる操作と、周期を持たない信号も扱うフーリエ変換は、関連しますが同一の式ではありません。
9. 学びをつなぐ
辺の比から座標、座標から周期、周期から振動と信号の解析へ進むと、公式の役割が見えます。計算では角度の単位、分母が0にならない条件、モデルの仮定を確かめましょう。光の応用は空の青さと夕陽の赤さを生む光の散乱でも扱っています。ここで学んだ波の表現と、波長による散乱の違いをつなげて読めます。
まとめ
三角関数は、三角形の辺の比、円上の座標、周期的な変化をつなぎます。sinとcosは縦横の成分、tanはcosが0でない範囲での比です。公式は角度単位と定義域を確かめて使い、物理への応用では摩擦などを省いたモデルの条件も読み取りましょう。



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